MMT通信「にゅんさん、おメールありがとうございます。」第2章

MMT通信「にゅんさん、おメールありがとうございます。」第2章

2019.12.15

みなさん、こんにちは。12月になってグッと寒くなってきました。
前回第1章(記事はこちら)から2週間がたちましたが、本日、第2章配信です。

前回は、主に、インターバンク金利(政策金利)を上下させる金融政策の是非についてのやり取りでした。MMTは、金融政策は無意味だったり、他の意図があったり、それそのものの弊害があるので良くないと考える、ということでした。
やり取りのくわしくは、第1章をお読みください。
今回、第2章では、「国債を市場に出す(民間に対して発行する)」ことそのものを問題とするMMTの考えについてのやり取りです。

Letter from Nyun -03

松尾様

前回Letter from Matsuo -02の、①のインターバンク金利(政策金利)につきましては、今回書かれたことに違和感がありませんでしたので、MMTの論理へのご理解はそれで良いのかな?と思います。
本日望月さんがアップした101の翻訳エントリ(ビル・ミッチェル「日本式Q&A – Part 1」)に詳しく書かれているので、あとはそちらをご覧になっていただければと思います。

②の「(MMTは)国債をなくして直接準備預金増を市中銀行の資産側に入れて政府支出することが希求されているのだと理解しています。これはデフレ不況下では、実践的には私の主張と全く同じになります。」(Letter from Matsuo -02)
についてですが、MMTの主張と松尾さんのご主張は実質的に同じ「ではない」のです。
なので、MMTの論理をご理解いただくために「どこが違うのか」をご説明するのが良いように思います。

ミッチェルやレイやモズラーは、国債、つまり「政府の利付債券」を市場に出すこと自体に反対しているのです。
財務省が国債を民間に対して発行することそのものに問題があると主張しています。

モズラーの言葉で「金利とは、すでにカネを持っている人へのベーシックインカムである」というのがポイントを突いています。
つまり、格差の原因にしかなっていないのです。

後で日銀が買い戻せば同じということはまったくありません。
債券ディーラーが財務省から利付の国債を購入し、それを市場価格で日銀に販売するならば債券ディーラーが労働なしで利益を得ることになります。

これは純粋に格差の原因にしかなっておらず、公益を損なうものでしかないのです。
こちらは、ミッチェルのエントリを翻訳したものですが、上記のことを念頭にこちらをご覧になっていただければ、MMTの国債廃止論が、日銀の市場からの国債吸収とどれだけ違うかかなりわかってくると思います。

そのあとで、ご意見や質問をいただければと一番効率がよいだろうと考えます。

https://econ101.jp/%E3%83%93%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%80%8C%E5%9B%BD%E5%82%B5%E3%81%AE%E7%99%BA%E8%A1%8C%E3%81%AF%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%8D%EF%BC%882015/

追伸です。
改めて拝読すると、MMTが国債の市中発行に反対であることはご理解されているように読めました。するとわからないのは、この文です。

「これはデフレ不況下では、実践的には私の主張と全く同じになります。」

デフレ不況であろうがなかろうが、国債の市中発行には問題があります。それ自体が公益に反するからですね。
以上です。

Nyun


Letter from Matsuo -03

にゅんさま
ご説明ありがとうございます。

私自身の主張で申しますと、国債の市中発行にはもともと賛成ではありません。これは、デフレ不況であろうがなかろうがです。
それは、これ自体はMMTとはまた違う主張になると思いますが、本来は、私は政府貨幣論者だからです。
ただ、幾重にも現実妥協をするつもりはあって、世間が政府貨幣がだめだと言うならば、国債の日銀引き受けでもいいと思っていますし、それもだめだと言うならば、量的緩和下の国債の市中発行でもいいと思っているものです。それは自分たちの政治的影響力がどの程度のところまでいったかという政治プロセスの問題です。
それはともかく、国債を使わないというのであれば、ますます私の本来主張したいことと同じだということになります。

質問の筋が見えにくくなっているように思いますが、本場MMTの筋ならば、本来は国債をなくして直接準備預金で政府支出するのだけど、
「「財源」という形をとるために国債が出されたならば、」
という世間の前提を入れたif文のもとでは、「すべて日銀が買い取るということになる」だろうと私は申しているのであって、ここのところは、中野(剛志)さんのMMT解釈の影響を受けた人たちは、その点で、国債の市中消化にこだわっているように見受けられて、本場MMTの主張とずいぶん違いがありますねということを確認したくて、対比の意味で出している話です。

改めて説明すれば、対比のために、「国債が市中に向けて発行される」というところを前提にそろえると、中野さんの説明では「市中銀行が国債を持ったままにする」のに対して、ゼロ金利維持のミッチェル政策(本場MMT)の場合は「中央銀行が国債を買い取らなければならない」ことになろうという、主張の違いの確認をしたくて申したことなのです。

その上でお尋ねしたいことは、この中野さんたちの立場が、「赤字財政支出が、国債が市中に向けて発行されるところから始まる」という中野さんの説明(超過準備が生まれることがない)から帰結すると思っていたのに、レイさんの説明も結局これと同じになっているように見受けられるので、「両者の主張が違う」と私が思っていたのは違ってたのですかね、ということです。そうすると、MMTの説明として中野さんの説明を使っても、おおざっぱな話として問題ないわけでしょうか。

伝わりにくい文章のせいで何度もやりとりをさせるお煩わせをさせすみません。

松尾匡


Letter from Nyun -04

松尾様

徐々に核心に近づいていると思いますので、お気になさらず。

ここで確認したいのは、
「「財源」という形をとるために国債が出されたならば、」
というif文において、「すべて日銀が買い取るということになる」とおっしゃる意味は、市場を通さない直接引き受けでしょうか。それとも、いったん国債を市場に出すのでしょうか。

前者であれば、金持ちに金利を支払うことがなくなるので、MMTは歓迎です。
後者であれば、市場に出し後の国債を日銀が購入することにはあまり意味がなく、従って、中野さん流で十分では?となります。

まずは松尾さんの意図がどちらなのかを知りたいです。

Nyun


Letter from Matsuo -04

にゅんさま
はい。何も気にしてはおりません。

私自身の主張としては、国債は、日銀の直接引き受けがなされるべきだと思いますが、それが受け入れられない場合は、もちろんそれよりは劣りますが、一旦、国債を市場に流して日銀が買うのでもいいと思っています。市中に国債を残したままにすると、それこそ金持ちに金利を支払い続けることになるので、それよりはましだと思います。

そうすると本場MMTerと中野さん流MMTの違いは、後者は利子がお金持ちに払われることを嫌がらないだけの違いで、会計取引の手順をめぐる認識の違いがあると私が思っていたのは誤解だったということでしょうか。

松尾匡


 

 

レター第2章 編集後記

大石:

今回もハラハラドキドキの展開でした。
第2章の今回は、「国債」をめぐるMMTの考え方について伺うやり取りでした。
MMTの考えでは、国債を市場に出す(民間に対して発行する)ことは、利子がお金持ちに払われ格差拡大につながるので、違う方法を追求するべきだ。また、それはデフレ不況かどうかには関係ない、ということでした。
一方、松尾さんも、また違う立場で、デフレ不況であろうがなかろうが、本来は、国債の市中発行には賛成ではない、デフレ不況時の国債発行(日銀の直接引き受け、または市中発行)はより幅広く政策への合意を得るための政治的オプションとなるのではないかと考えているように、私は理解しました。
さて…リアルのメールのやり取りでは、今、Letter-08くらいまで行ってますよね。ここまでの感想は、どんな感じですか?

 

松尾さん:

それが、その後、ミッチェルさんのブログで回答が出てきて、結論的には全く満足していて、気持ち的には解決したつもりになってるんですよねぇ。

 

大石:

そんな連載2回目にして盛り下がることを…
(学者って空気読まんよな…。)
にゅんさんは?

 

にゅんさん:

ありがたい企画ですので粘り強く続けさせてもらえたらうれしいです。
たとえば、日銀引き受けが無理だとしても、ケルトンの言うように長期国債や財投債を廃止して短期国債だけにするとか、民間に売るにしても外資ハゲタカ証券でなく、年金だけに発行する(これなら高金利歓迎)ことにするとか、できることはたくさんあるんです。
そこまでいけば「そもそも財政とは」と言った話にたどり着け…ますかね?

 

大石:
その話、第3章の流れですね。盛り上げていきましょう(^^)
次回の第3章では、MMTの国債発行のより詳しい考えを伺います。
みなさん、お楽しみに。Let us work with you all!(END)

このページの作成者:大石