薔薇マークキャンペーンの刷新について(2019.10.27呼びかけ人・賛同人会議報告)

10月27日の「薔薇マークキャンペーン呼びかけ人・賛同人」会合には、政党関係や、医療、介護、消費税反対運動などの反緊縮プログレッシブ各分野から33名の方にご参加いただきました。

2019年10月27日会合集合写真

2019年10月27日会合集合写真

大変遅くなりましたが、会議の資料等をご報告します。

会議の配布資料・パワポ資料・動画

会議の様子はYouTubeで公開しています。
【公開中のYouTube動画】
https://youtu.be/hMF173swDsE

0(分):00(秒)-「薔薇マークキャンペーンの軌跡」(西郷南海子)
20:40-「移行方針案、現在の経済指標」(松尾匡)
1:30:20-意見交換

【当日の資料】
議事次第
薔薇マークの軌跡(西郷南海子)
「移行方針案、現在の経済指標」(松尾匡)
移行方針(案)-薔薇マークキャンペーンを刷新します(代表・松尾匡)
新薔薇組織図

会議では、新組織への移行方針案について活発な議論が交わされ、2019年2月からの薔薇マークキャンペーン(認定キャンペーン)の果たした役割について振り返り、「次のステージ」への刷新を確認しました。
次のステージの大きな課題としては、①政府の緊縮政策に対し、具体的な社会運動により対抗していくこと、②歴史修正主義と対抗する内外の運動と広く結びつき、国際連帯を強めること、③反緊縮の経済政策を掲げる政党(れいわ新選組など)と連携した草の根の運動とすることを掲げています。
今後、薔薇マークキャンペーンは、具体的な社会運動の「反緊縮プログレッシブ運動」を担う人々による「協議・連携のネットワーク」「協議体」組織を目指し、当面のプロジェクトを進めていきます。引き続き、ご注目とご支援よろしくお願いします。

【当日の意見と松尾匡コメント】①

【参加者からのコメント】
◆今後、維新も反緊縮を掲げることができるのであれば、「反緊縮」だけでは足りなくなる。政権交代を目指すには、もっともっと野党が求心力を持たないと。
◆右からの反緊縮に対しては、憲法の観点から対決軸を作りたい。人は何か(たとえば会社の売り上げなど)のために生きているのか、それとも生きているだけで価値があるのか。権力を強大化させるのか、それとも権力の暴走を止めるのか。
◆「For the Many, Not the Few」(イギリス労働党)というような包括的なスローガンがないと、それぞれの活動の母屋に議題を持って行きにくい。
◆野党共闘の求心力は低下している。権力とつながっていない人たちの力を集めて、薔薇マークが「力」を示さなければ。

【これらに対する松尾匡コメント】
大変大事な点のご指摘だと思います。そのほか、大衆のまっとうな怒りに依拠しなければならないとのお話もありました。軸を力として示すべきだとのお言葉もありました。資本蓄積のために命を犠牲にするようなやり方に大きな疑問との声もありました。すべてご指摘のとおりだと思いますので、ご指摘の線にそって、新組織の設立理念を作り上げていきたいと思います。
ご指摘全体をまとめますと、参加者からいただいたご意見の中にありました、まさに「人は生きているだけで価値がある」ということこそ、反緊縮プログレッシブのコアになる「包括的スローガン」であり、対決軸となるものではないかと改めて気づかされた次第です。生産性で人に優劣をつける思考と同類のものは、政治的なことを理性的に考える力で人に優劣をつける思考や、慣習や宗教や忠誠心に則る行動で人に優劣をつける思考にも共通する姿勢として、左右リベラルを問わず蔓延し、この社会を人が生きづらいものにしている根源になっていると思います。
そうではなく、「人は生きているだけで価値がある」という姿勢に立つことで、あからさまな新自由主義緊縮派とはもちろん、人を資本蓄積や国家への貢献によって優劣づけることから離れられない、まがいものの「反緊縮」との対決軸を、はっきり打ち出すことができます。それだけではありません。こうして99%の側のすべての庶民に(言語化されていないかもしれないけれども)共通する、まっとうな怒りや願望に依拠して、それを汲み取ってスローガン化してこそ、広範な人々がさまざまな場面で立ち上がり、それに支えられることで、ボス交の数合わせではない、本当に勝てる政治連携ができるのだと思います。
この軸をぶらせて、やむなく「今だけ金だけ自分だけ」に生きるしかないように追い込まれている(それどころか本当はたいてい強者のための自己犠牲を強いられている)庶民に、上から目線でもっと理性的な価値ある人間になれと言って、例えば消費税の負担を甘受するとか、限られた財政をもっと弱い立場の人たちと分かち合うとかいったことを押し付ける姿勢に巻き込まれたならば、まがいものの「反緊縮」にとてもかなうわけはないでしょう。
「憲法の観点からの対決軸」というご意見がありました。憲法25条の生存権規定は、マッカーサー草案にはなく、国会の審議で加わった、いかなる意味でも「押しつけ」ではない規定ですが、9条ともども、戦争の惨禍で生きること自体が危機に陥った人々の願望を体現したものとして、日本に生きる人々に受け入れられたのだと思います。一部に言われるように国債の日銀引き受けで景気を回復させた高橋財政が戦争に道を開いたのではなく、リベラル派の民政党政権が金本位制で通貨発行を縛って、世界恐慌下で緊縮財政をとり、人々の生存を破壊したことこそが、軍国主義化と侵略を後押しする世論を作り出したのです。だから、「人は生きているだけで価値がある」という25条の姿勢を貫くことが、真に9条の精神を守ることにつながるのだと思います。その意味でも、この立場は右からの「反緊縮」への対抗軸になると同時に、9条だけの護憲の力の限界を諸勢力に説得するスローガンにもなると思います。

【当日の意見と松尾匡コメント】②

◆ご意見:政治家として勉強できる場が欲しい。
お答え:有料の講義シリーズを計画しています。

◆ご意見:たとえば、とある野党議員のサポート組織は会費制で、帰属感も高まる。
お答え:これまでのメルマガや情報交換のウェブサロンなどが無料で利用できる会員に加えて、何らかの有料のサポート会員制も検討したいと思います。

ご意見:
◆運動の目玉を何にするか、消費税減税?廃止?
◆運動の「ヤマ場」をどこに持ってくるか。次の衆議院選挙、東京都知事選挙、大阪住民投票がいっぺんにやってくる可能性。
◆医者をしているが、患者さんやその家族の生活が、この20年間で崩壊しているのを実感。子どもやお年寄りの夜の受診が増えているのは、昼間働かなければならないから。
◆緊縮の脅しは、介護や医療など社会保障や人の命にかかわる「現場」に現れてくる。「財源がない」という脅しで、消費税増税が必要だと受け入れさせられている。反緊縮はこの脅しのウソを明らかにして、現場にあきらめなくていいんだという気持ちをもたらすものとして、期待したい。
◆介護現場では、少子高齢化、生産年齢人口減少の脅しで、社会保障抑制が正当化されている面もあるので、これへの反ばくや提言もほしいところ。
◆日本では零細中小企業に勤めている人が多い、ここの賃上げが難しい。
◆アメリカでは若者に社会民主主義が熱狂的に支持されているが、それはそれだけ生活が苦しいから。日本の中間層が、生活を苦しいということを認めたがらない。この人たちがどう動くか。

お答え:
消費税率引き上げ後の打撃が想像以上に深刻なものだったことが明らかになっています。今後景気の後退が進行するにつれて、これまでにもまして、ますます苦しい暮らしに追い込まれる人が増え、中間層と自認していた人たちの間でもやせ我慢ができなくなってくるものと思われます。「財源がない」と言われて消費税増税を黙認した層の間でも動揺が広がるものと思われます。
このような中で、2020年は、総選挙の可能性が濃厚であるなど、一連の政治イベントを迎えることになります。「反緊縮」「積極財政」の世論の高まりを警戒している政府は、すでに財政投融資込みで13兆円の経済対策を打ち出しました。日本維新の会などの新自由主義の政治勢力も、これまでの緊縮の姿勢を隠して新党を作り、景気後退をもたらした政府を右側から批判して反緊縮をアピールするかもしれません。野党側がこれらに対抗するのに、財政規律論からの批判ではとうてい勝ち目はありません。それどころか消費税を8%に戻すというだけのスローガンでもインパクトにかけるでしょう。実際、まだ安倍首相は参議院選挙を意識して消費税引き上げを延期するだろうといった観測がある程度信じられていた時期から、すでにいろいろな経済指標が下落しはじめていましたから、8%で不況を防ぐことができないことは明白です。
薔薇マークの新組織への移行に向けては、プログレッシブ側がこれらの動きに負けてしまうことのないよう、必要な政策提言や連携を進めていきたいところです。消費税5%への引き下げを一致点として、国政・地方で、ひとびとの暮らしへの直接の積極的な財政支出を掲げる広範な人々の連携の一助となりたいと考えます。
例えば、京都市長選挙など、地方における反緊縮プログレッシブの連携をしていきたい。もちろん、この選挙にかぎらない具体的な政策練り上げのために、各分野の実践現場の専門家を加えたマニフェスト研究会を作る方向で動いており、これを10月27日会合で確認された新体制の協議体の組織化につなげていければと考えています。