「緊縮政策が招いた人災・新型コロナ感染拡大と生活防衛にむけて」2020年3月1日 事務局コメント

緊縮政策が招いた人災・新型コロナ感染拡大と生活防衛にむけて

2020年3月1日 薔薇マークキャンペーン事務局

概要

新型コロナウイルス感染拡大に対し日本政府が無力なのは、過去20年で検査研究機関の予算を3割超も削減するなど、緊縮政策で公衆衛生をおろそかにしてきた結果であり、人災です。

また、安倍政権の全国一斉休校要請などの対策は、高まる政権批判をかわすために、迷走しながら無責任な強権発動をするものです。いま政府に求められているのは、強権発動ではなく、感染拡大をふせぐ行動を人々が取れるようにする大胆な財政政策です。

第一に、政府が要請したイベント等の自粛と学校休校については、労働者や自営業・サービス産業など影響を受ける方々への休業・生活補償が必要です。
第二に、本気で感染拡大をふせぐためには、政府は、労働者に100%の休業手当を払うよう事業者に求め、事業者には政府が補償をすべきです。

政府による休業補償の必要額は、私たちの試算では、2ヶ月で6.2兆円、1ヶ月で3.1兆円です。現状の政府の言う「予備費の2700億円」は全く足りません。全額、国債で対応すべきです。
これに加えて、緊急政策として、消費税の5%への減税が今すぐ必要です。
人々の生活を守るための、政府の速やかな決断を求めます。

(1)新型コロナ感染拡大は緊縮政策が招いた人災

政府は1月28日に、新型コロナウイルス感染症について、感染症法の「指定感染症」に指定しました(2月1日施行)。これは、水際対策とともに、法的に患者の入院措置や濃厚接触者への検査など、初期段階での感染封じ込めを可能としたものでした。

しかし、行政検査の対象が狭すぎると指摘されています。対象は、中国武漢への渡航歴や、入院を要する肺炎症状などに限定され、全国の自治体では医療機関からの検査要請に応えられない事態となってしまいました。クルーズ船でも、感染防御ができない密室に無駄に閉じ込め、かえって感染を拡大する悲劇を生み出したのです。

この背景には、日本の感染症検査の体制が、20年来の緊縮政策によって、極度にぜい弱になっていたことがあります。未知のウイルスに対する精度の高い検査を行うには、国立感染症研究所と全国の都道府県・指定都市に設置が求められる地方衛生研究所での専門集団が確保されていることが不可欠です。しかし、国立感染症研究所の予算は10年間で約20億円(3分の1)もカットされてきましたし(※1)、全国の地方衛生研究所でも予算や人員が削減されてきました。例えば大阪市では、人員が4割も削減された上に(※2)、2つあった研究所が無駄とされ「検査は行政がやらなくてよい」と1つにされ民営化されてしまったのです(2017年4月)。

このような体制の下で、関係機関の職員は懸命に対応にあたっていますが、積極的な感染拡大防止策がとれないのは当然です。これは緊縮政策で、公衆衛生をおろそかにしてきた結果であり、人災です。

※1:2019年4月の日本共産党の田村議員質問
※2:環科研・公衛研まもれネットワーク

(2)安倍政権の無策な全国一斉休校要請

安倍政権の全国一斉休校要請などの対策は、ひとびとの命や生活を守るためではなく、高まる政権批判をかわすために、迷走しながら無責任な強権発動をするものです。それにより、現場に大きな混乱と被害をもたらしています。いま政府に求められているのは、強権で社会生活を混乱させることではなく、感染拡大をふせぐ行動を人々が取れるように後押しする大胆な財政政策です。

政府の迷走ぶりはこの間の経過を見ても明らかです。2月25日に、専門家会議の意見を踏まえた「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を発表し、感染拡大防止により患者の増加のスピードを可能な限り抑制することと、重症者対策の医療提供体制の確保が重要としました。
この時点では、「イベント等の開催について、現時点で全国一律の自粛要請を行うものではない」としていましたが、翌日の26日に安倍首相はイベント等の自粛を要請、さらに27日には、突如として全国の小中高校の一斉休校を要請しました。また、集会の中止命令や物資の強制買い上げといった私権制限も可能になる新型インフルエンザ特別措置法を参考にした法整備を表明しています。

現場での混乱と被害は深刻です。全国一斉の休校要請で、小学校低学年の保護者はたちまち対応に追われています。子どもを持つ世帯の6割近くは共働きであり、医療機関や保育、介護の従事者も、託児ができずにサービスが提供できない事態が発生しています。シングルマザー(ファーザー)はどうしたらいいのか、何も示されていません。給食に食材を提供してきた酪農業などの損害、休業を余儀なくされる自営業の損失も深刻です。

(3)政府に、人びとの生活を守るための財政出動を求めます

第一に、政府が要請したイベント等の自粛と学校休校については、労働者や自営業・サービス産業など影響を受ける方々への休業・生活補償が必要です。
学校の休校で仕事を休まざるを得ない労働者は、収入を失ったり、有給休暇で休めと言われたりしていますが、論外です。政府の要請なら、政府の責任で全額補償しなければなりません。仕事を休まざるを得ない労働者には、通常の有給休暇とは別枠の特別休暇を保障し、不利益を生じさせないことを求めます。安倍首相は2月28日の記者会見で「新しい助成金」制度を創設すると表明しましたが、中身も金額も不明で、そもそも「全額補償はしない」という表明です。

第二に、本気で感染拡大をふせぐためには、政府は、労働者に自主的に休めというのではなく、100%の休業手当を払うよう事業者に求め、事業者には補償をすべきです。
現在、政府は「労働者が発熱などの風邪症状が見られる際に、休みやすい環境の整備」をつくるよう経済団体などに要請し、介護業界に対しては「37.5 度以上の発熱の場合には、出勤を行わないことを徹底」を求めていますが(2月24日)、財政的な後押しはなく、現場と労働者に責任を丸投げしています。少ない人手でサービスを確保しないといけない現場は大混乱です。同様に、政府(厚生労働省)の企業向けQ&Aでは、休むのが「使用者の自主的な判断」の場合は休業手当が必要とし、「労働者が自主的に休まれる場合」は休業手当は不要と説明するなど、現場と労働者に責任を丸投げしています。これでは風邪症状で休む環境にはなりません。
また、政府は事業者への助成として、新型コロナに関する休業への雇用調整助成金の特例措置を発表していますが(2月14日)、学校の休校に伴う休業や、発熱の場合の出勤停止も対象なのか明確ではなく、また助成金額も3分の2では実効性がありません。

政府による休業補償の必要額は、私たちの試算では、2ヶ月で6.2兆円、1ヶ月で3.1兆円です(※3)。しかし、政府は「予備費の2700億円で対応」としており、必要額の5~10%にも満たず、全く足りません。全額、国債で対応すべきです。

これに加えて、緊急政策として、消費税の5%への減税がまったなしに必要です。
新型コロナの感染が広がる前に、消費税10%増税によって昨年10-12月の実質経済成長率がマイナス6.3%となりました。緊縮政策の失策によって経済全体の崩壊が危惧されています。

薔薇マークキャンペーンは、人々の生活を守るための、政府の速やかな決断を求めます。
みなさん、一緒にがんばりましょう。

※3: 2015年産業連関表(部門別国内生産額)で、コロナウィルス対策による休校や休業、イベント中止、来客数の激減で損害を受ける産業部門の生産額を計算した。
なお、れいわ新選組は一カ月3.5兆円と試算しており(https://reiwa-shinsengumi.com/reiwanews/4396/)、その試算でそん色はないが、ここでは仕入れが止まって、そのぶんを仕入先にさかのぼって補償することを想定し輸入中間財のぶんを除いて3.1兆円とした。
また、対象部門を増やすことも考えられる。対象部門を教育にも広げた場合の試算(輸入中間財除かず)では一カ月5.5兆円となる(産業連関表631101-631204、671101-672101、673102-674105)。
給付の方法は、申告に応じて補償し、著しい不正があれば事後的に返金(罰金つき)を求める形でよい。