薔薇マークキャンペーン趣意書
2018/1/5
アメリカ公民権運動の指導者キング牧師は、有名な1963年の演説「私には夢がある」の中で、「ミシシッピの黒人が投票することができず、ニューヨークの黒人が投票すべき選択肢がないと考えている限り、我々は決して満足することはできない」と言いました。
今の日本もそうです。職を失う不安、パワハラ、「サービス残業」、介護や育児の負担、賃下げなどで、5割を超える人が「生活が苦しい」と答えています※1。そのため、個人消費も伸び悩み、デフレからまったく脱却できていません。大企業は史上空前の利益を上げ続けているというのに※2。そんな人々の中で、「投票したい選択肢がない」と感じている人がたくさんいるはずだと思われます。
考えてもみてください。安倍内閣のこの5年間、安保法制や秘密保護法や共謀罪法の強行採決、沖縄の基地建設強行など反対の世論のほうが多いものが決められてきました。森友学園の国有地の不当な値引きや、財務省の決裁文書改ざんなどの政治の腐敗にも批判的な世論が圧倒的です。安倍首相のもとでの改憲にも過半数の世論が常に反対しています。
それにもかかわらず、安倍内閣の支持率は高く、安倍自民党は国政選挙に5回圧勝したのです。まさに、「投票したい選択肢がない」と考えた人々が投票に行かず、あるいは仕方なく安倍首相による景気回復の約束、一定の雇用状況の改善※3に頼るしかないという状況を示しているのではないでしょうか。
ところが、政府は2019年10月に、消費税を10%に増税しようとしています。「財政健全化」を掲げていますが、実際は、法人税を引き下げてきた穴埋めに使われており、国民との約束であった社会保障の充実に財政支出はまったく足りていません。これでは、個人消費はさらに冷え込み、デフレはさらに深刻化、経済へのダメージは確実です。その上、「(低賃金)労働力不足」解消のための入管法改正までなされました。この選択肢でいいのかという動揺が起こってきて当然です。
2019年は、4月の統一地方選挙から7月の参議院選挙と、日本の今後が決まる重要な年になります。残念ながら野党側は、民主党政権のイメージをいまだ払拭できないままで、有権者に安心と希望を与える力強い経済政策を提起できていません。ここで野党側が民主党政権の過ちを忘れて、財政緊縮と消費増税にふみきった「財政危機論」に飲まれてしまったら、どうなるでしょうか。
政府や大阪の維新が打ち出しているのは、オリンピックに続く、カジノとセットの万博など、海外資本・大企業の利益拡大ばかりの景気刺激策ですが、その派手さに野党が対抗できなくては、またも安倍自民党は圧勝してしまうことでしょう。その結果、多くの有権者が反対する政策がさらに推し進められ、この動きは固定化されてしまうと、私たちはたいへんな危機感を持っています。
今度こそ安倍自民党に選挙で勝たなければなりません。そのためには野党は、人々の生活を良くするための経済政策を最優先の課題として争点にしなければなりません。強者から優先的に税金を取る所得再分配の考えに立ち返ること。介護、医療、保育など、人々が不安に思っている問題の解決に、圧倒的に投資すること。そのことで経済を底上げしてまっとうな雇用を拡大し、人々の暮らしを豊かにすることを、真っ向から訴えるべきです。
キング牧師没後50年の2018年、全米中間選挙で、ニューヨークではとうとう「投票すべき選択肢」が登場しました。「反緊縮」(社会保障などの政府支出を削減することに反対する路線)を訴えたオカシオコルテスさんが民主党内で現職幹部をやぶって候補者になり、トランプ共和党候補に圧勝しました。フランスでは”黄色いベスト”運動が増税をストップさせました。この勝利に続きましょう。日本にも安倍政権の経済政策に対抗できる、「反緊縮」の選択肢を作り出しましょう!
2019年7月の参議院選挙にむけて、まず4月の統一地方選挙で仲間を作っていくことが必要です。私たちは、その過程で、政党を問わず、「反緊縮の経済政策」を打ち出す立候補予定者個人に、「薔薇マーク」を認定します。「薔薇マーク」は、人々が豊かな生活と尊厳を求める世界的な運動の象徴です。薔薇マークキャンペーンは、人々の抱える生活不安を希望に変える、新たな波を起こすことができると確信します。
薔薇マークキャンペーンの趣旨に賛同し、財政規律を優先させる緊縮的な政策を正しくないと考え、おおむね以下の反緊縮の経済政策を第一に掲げている立候補予定者を認定します。なお、これは経済政策以外の点で当該候補を推薦することを意味しません。
- 消費税の10%増税凍結(むしろ景気対策として5%に減税することを掲げるのが望ましい。ただしこれは認定条件ではない。)
- 人々の生活健全化を第一に、社会保障・医療・介護・保育・教育・防災への大胆な財政出動を行い、それによって経済を底上げして、質の良い雇用を大量に創出する。(国政候補は「大量失業が続く不況時代には二度と戻さない」と掲げることが望ましい。)
- 最低賃金を引き上げ、労働基準を強化して長時間労働や賃金抑制を強制する企業を根絶し、人権侵害を引き起こしている外国人技能実習制度は廃止する。
- 大企業・富裕層の課税強化(所得税、法人税等)など、「力」の強弱に応じた「公正」な税制度を実現する。
- (4)の増税が実現するまでの間、(2)の支出のために、国債を発行してなるべく低コストで資金調達することと矛盾する政策方針を掲げない。
- 公共インフラのいっそうの充実を図るとともに、公費による運営を堅持する。
(注)薔薇マークの理念として、個人の尊厳が前提であり、民族差別や性差別など個人の尊厳を否定する言動をしている政党、候補者は認定対象にはなりません。
※1 2017年度版 国民生活基礎調査
※2 上場企業の2019年3月期通期の業績見通しは純利益前期比1%増と3期連続の最高益を確保する見通し<18/11/16日本経済新聞社>
※3 2018年11月の月例経済報告では、完全失業率は2.3%と25年ぶりの低水準、有効求人倍率は1.64倍とバブル期を超える。
※4 候補者のホームページ等から判断して、認定基準の(1)~(6)に反するものが1つもなく、そのうち3つ以上を経済政策として打ち出している場合に認定とします。