キックオフ記者会見での松尾匡代表の挨拶

2月1日キックオフ記者会見で挨拶する松尾匡代表

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(2019/02/01 衆議院第一議員会館)

本日はお忙しいところお集まりくださいまして、ありがとうございます。
松尾匡ともうします。立命館大学で経済学を教えております。

このたび「薔薇マークキャンペーン」という運動を立ち上げましたので、ここにご報告申し上げます。
これは、四月の統一地方選挙と七月の参議院選挙の立候補予定者に対して、私たちの望む「反緊縮」の経済政策を公約に掲げてくださるよう呼びかけ、掲げてくださったかたには認定マークの「薔薇マーク」を出すというものです。

このような運動を始めることにした理由、背景についてもうしあげます。

この20年以上にわたって世界を支配してきたスローガンは、財政規律、インフレ警戒、国際競争力であります。このスローガンのもと、新自由主義の勢力によって、緊縮政策が続けられてきました。福祉をはじめとする財政の削減や、大衆増税、雇用の非正規化、賃金抑制の一方で、富裕層や大企業への減税や民営化が進められてきました。その結果、格差と貧困と搾取、ケアの不足、経済停滞による失業や将来不安、そして戦禍が世界の民衆に押し付けられる一方で、ごく一握りのグローバルな強者が大儲けする世の中がもたらされました。

ところがこれに対抗するはずのリベラル派や中道左派の既成勢力もまた、新自由主義を多少マイルドにしただけで、財政規律、インフレ警戒、国際競争力のスローガンをあいかわらず共有し、一握りのエリートが決めたこうした路線を、左右に関係ない必然として押し付けてきたわけです。その結果、民衆のおかれた状況を改善することに失敗してきました。

今世界では右派ポピュリズムの嵐が吹き荒れ、その結果、トランプ政権など次々と権威主義的な政権が樹立されていますが、それは、こうした閉塞状況への民衆の反発がもたらしたものにほかなりません。しかしこの道は、世界の民衆を憎悪で分断し、新たな抑圧と戦争の危機をもたらすだけでしょう。

この日本で見られたこともまぎれもなくこうした世界的な構図の一環であります。やはりこの20年あまり、財政規律、インフレ警戒、国際競争力のスローガンが掲げられ、橋本龍太郎政権や小泉政権などの新自由主義政策によって、福祉をはじめとする財政の削減や、大衆増税、雇用の非正規化、賃金抑制の一方で、富裕層や大企業への減税や民営化が進められてきました。そしてその結果、深刻な長期不況の中で、ロストジェネレーション世代の人々などに膨大な貧困者が生み出されてきましたが、こうした状況への批判を背に成立した民主党政権もまた、これらのスローガンを共有し、リーマンショック後の民衆のおかれた悲惨な状況を改善することに失敗したのであります。そして消費税増税方針も打ち出して、民衆から見放されてしまいました。こうした閉塞状況への反発とそこから脱却したいという民衆の願望が、大胆な景気回復策を掲げる安倍政権を誕生させたわけです。これはトランプ現象の先取りだったと言えます。

安倍政権はこのかん、安保法制や秘密保護法や共謀罪法などで世論の反対の方が多い強行採決を繰り返し、あいつぐスキャンダルにも世論の圧倒的多数が批判的なのですが、それにもかかわらず高い支持率を維持し、これまでに国政選挙で5回圧勝してきました。それは、安倍政権下で多少の経済状況の改善が見られた一方で、野党側が依然として、財政規律、インフレ警戒、国際競争力といったスローガンにこだわっているのではないか、そのためにおカネを出し渋り、また不況をもたらすのではないかという疑念を払拭しきれていないためだと思われます。

しかし実は安倍政権の経済運営は口で言うほど景気刺激的ではなく、最初の一年こそ公共事業を大盤振る舞いしましたが、あとは基本的に財政支出を抑制してきました。たしかに軍事費は拡大し、選挙前になると公共事業を増やして景況感を演出してきましたが、そのあおりで社会保障の削減が続いています。そのため、せっかく日銀に出させた膨大なおカネは、政府が人々の必要のためにまわすこともなく、銀行に無駄に溜め込まれて一部の人にバブルをもたらすだけになっています。その上消費税を引き上げて個人消費を低迷させ、さらにその教訓にもかかわらず、世界経済に黄色信号がともっているこのタイミングで、またも消費税を引き上げ、経済を不況に舞い戻らせる危険にさらしています。この20年間、日本は戦争・紛争のない国で最も政府支出の伸びが低く、その結果最も成長の低い、一番の緊縮国家だったわけですが、安倍政権もそれを決して脱却したわけではなく、緊縮の犠牲となった民衆の期待を裏切っていると言えます。

しかしここで野党側が民衆の暮らしをよくする経済政策を正面にすえず、それどころか財政規律、インフレ警戒、国際競争力といったスローガンの側から安倍政権の経済運営を批判したならば、やっぱり恵まれたエリートの決めた緊縮策を押し付ける人たちなのだと有権者からみなされて、次の選挙はまたも自民党の圧勝となるでしょう。たとえ経済危機のような事態になって自民党が有権者から見放されたとしても、今度それに代わって隆盛するのは、安倍自民党よりもさらに過激な極右勢力ということになるでしょう。

それゆえ、ひとびとの暮らしの苦しみや不安にこたえることのできる選択肢の登場が望まれています。

さきほどの動画でご紹介したとおり、欧米ではこのような選択肢が台頭しています。イギリスのコービンさんの労働党、スペインのポデモス、アメリカではご存知の通りさきの大統領選挙の民主党予備選挙でサンダースさんがクリントンさんにあと一歩のところまで迫り、去年の中間選挙では、オカシオコルテスさんはじめサンダース派の下院議員が9人当選しました。フランスでは黄色のベスト運動が増税をストップさせました。
このスローガンが「反緊縮」です。これは、民衆の自分たちの暮らしにかかわることが、グローバルな大企業やウォール街やブリュッセルの一部のエリートの手に握られて、財政規律、インフレ警戒、国際競争力といったスローガンのもとに、左右にかかわりない必然として押し付けられてくることに反対して、経済を民衆のコントロールのもとに取り戻そうという運動です。

新自由主義のもたらした流れに反対し、福祉に医療に教育に、民衆の暮らしのために大胆に財政を投入する。そのために大企業や富裕層に応分の負担を課し、中央銀行の作ったおカネは銀行に無駄にためるのではなく、公的な資金として民衆のために使うということです。

昨年末、欧州でのこのような運動のリーダーの一人である、元ギリシャ財務大臣のバルファキスさんと、サンダースさんが、革新派の国際組織「プログレッシブ・インターナショナル」を作りました。日本でもこれに応える勢力を作るべきです。

日本でも、従来の、財政規律、インフレ警戒、国際競争力といったスローガンにとらわれていない人たち、大衆増税に反対し、民衆のために大胆に公金を使う「反緊縮」政策を進んで目指す人たちが、立憲民主党さんの中にも、共産党さんの中にも、その他の野党の中にも無所属の人の中にもたくさんいらっしゃると思います。
そのような人たちを可視化して、選択肢がないと悩んでいる多くの人々に、ここに選択肢があるよと明らかにしたいと思いました。

そこで、こちらから反緊縮の経済政策の簡単な基準を示し、それを受け入れてくれた候補者に認定マークを出すというアイデアを思いついたところ、思わぬ多くのかたがたから賛同を得て、とても精力的なスタッフの人たちと、私を含め22人の呼びかけ人の人たちが集まり、さる1月17日に、ホームページを公開してキャンペーンの発足を公表するに至ったものです。
発足後半月になりますが、現在、人の賛同人が、いくつもの熱いメッセージとともにお名前をお寄せくださっています。
これまでご協力くださったすべてのみなさんに厚くお礼申し上げます。

薔薇は、欧米では長く労働者の尊厳の象徴として、労働運動や社会主義運動でマークとして使われてきました。
また、薔薇マークは「おカネをばら撒く」のかけ言葉ともなっています。
さらにroseは、Rebuild Our Society and Economy 我々の社会と経済を再建しようというスローガンの頭文字にもなっています。
何より、灰色の緊縮より、バラ色の未来を語りたいです。

立候補予定者の自薦、他薦を受け付けています。ぜひ多くの候補者に、私たちの願う経済政策を採用していただき、目玉政策として掲げていただき、薔薇マークをつけて選挙戦を闘っていただきたいと思っています。多くの市民のみなさんに、そのためのご支援をお願いします。