2・1キックオフ記者会見詳報 【動画&テキスト】


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代表のあいさつ

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松尾匡(立命館大学経済学部教授)

 
本日はお忙しいところお集まりくださいまして、ありがとうございます。
松尾匡ともうします。立命館大学で経済学を教えております。

このたび「薔薇マークキャンペーン」という運動を立ち上げましたので、ここにご報告申し上げます。
これは、四月の統一地方選挙と七月の参議院選挙の立候補予定者に対して、私たちの望む「反緊縮」の経済政策を公約に掲げてくださるよう呼びかけ、掲げてくださったかたには認定マークの「薔薇マーク」を出すというものです。

このような運動を始めることにした理由、背景についてもうしあげます。

この20年以上にわたって世界を支配してきたスローガンは、財政規律、インフレ警戒、国際競争力であります。このスローガンのもと、新自由主義の勢力によって、緊縮政策が続けられてきました。福祉をはじめとする財政の削減や、大衆増税、雇用の非正規化、賃金抑制の一方で、富裕層や大企業への減税や民営化が進められてきました。その結果、格差と貧困と搾取、ケアの不足、経済停滞による失業や将来不安、そして戦禍が世界の民衆に押し付けられる一方で、ごく一握りのグローバルな強者が大儲けする世の中がもたらされました。

ところがこれに対抗するはずのリベラル派や中道左派の既成勢力もまた、新自由主義を多少マイルドにしただけで、財政規律、インフレ警戒、国際競争力のスローガンをあいかわらず共有し、一握りのエリートが決めたこうした路線を、左右に関係ない必然として押し付けてきたわけです。その結果、民衆のおかれた状況を改善することに失敗してきました。

今世界では右派ポピュリズムの嵐が吹き荒れ、その結果、トランプ政権など次々と権威主義的な政権が樹立されていますが、それは、こうした閉塞状況への民衆の反発がもたらしたものにほかなりません。しかしこの道は、世界の民衆を憎悪で分断し、新たな抑圧と戦争の危機をもたらすだけでしょう。

この日本で見られたこともまぎれもなくこうした世界的な構図の一環であります。やはりこの20年あまり、財政規律、インフレ警戒、国際競争力のスローガンが掲げられ、橋本龍太郎政権や小泉政権などの新自由主義政策によって、福祉をはじめとする財政の削減や、大衆増税、雇用の非正規化、賃金抑制の一方で、富裕層や大企業への減税や民営化が進められてきました。そしてその結果、深刻な長期不況の中で、ロストジェネレーション世代の人々などに膨大な貧困者が生み出されてきましたが、こうした状況への批判を背に成立した民主党政権もまた、これらのスローガンを共有し、リーマンショック後の民衆のおかれた悲惨な状況を改善することに失敗したのであります。そして消費税増税方針も打ち出して、民衆から見放されてしまいました。こうした閉塞状況への反発とそこから脱却したいという民衆の願望が、大胆な景気回復策を掲げる安倍政権を誕生させたわけです。これはトランプ現象の先取りだったと言えます。

安倍政権はこのかん、安保法制や秘密保護法や共謀罪法などで世論の反対の方が多い強行採決を繰り返し、あいつぐスキャンダルにも世論の圧倒的多数が批判的なのですが、それにもかかわらず高い支持率を維持し、これまでに国政選挙で5回圧勝してきました。それは、安倍政権下で多少の経済状況の改善が見られた一方で、野党側が依然として、財政規律、インフレ警戒、国際競争力といったスローガンにこだわっているのではないか、そのためにおカネを出し渋り、また不況をもたらすのではないかという疑念を払拭しきれていないためだと思われます。

しかし実は安倍政権の経済運営は口で言うほど景気刺激的ではなく、最初の一年こそ公共事業を大盤振る舞いしましたが、あとは基本的に財政支出を抑制してきました。たしかに軍事費は拡大し、選挙前になると公共事業を増やして景況感を演出してきましたが、そのあおりで社会保障の削減が続いています。そのため、せっかく日銀に出させた膨大なおカネは、政府が人々の必要のためにまわすこともなく、銀行に無駄に溜め込まれて一部の人にバブルをもたらすだけになっています。その上消費税を引き上げて個人消費を低迷させ、さらにその教訓にもかかわらず、世界経済に黄色信号がともっているこのタイミングで、またも消費税を引き上げ、経済を不況に舞い戻らせる危険にさらしています。この20年間、日本は戦争・紛争のない国で最も政府支出の伸びが低く、その結果最も成長の低い、一番の緊縮国家だったわけですが、安倍政権もそれを決して脱却したわけではなく、緊縮の犠牲となった民衆の期待を裏切っていると言えます。

しかしここで野党側が民衆の暮らしをよくする経済政策を正面にすえず、それどころか財政規律、インフレ警戒、国際競争力といったスローガンの側から安倍政権の経済運営を批判したならば、やっぱり恵まれたエリートの決めた緊縮策を押し付ける人たちなのだと有権者からみなされて、次の選挙はまたも自民党の圧勝となるでしょう。たとえ経済危機のような事態になって自民党が有権者から見放されたとしても、今度それに代わって隆盛するのは、安倍自民党よりもさらに過激な極右勢力ということになるでしょう。

それゆえ、ひとびとの暮らしの苦しみや不安にこたえることのできる選択肢の登場が望まれています。

さきほどの動画でご紹介したとおり、欧米ではこのような選択肢が台頭しています。イギリスのコービンさんの労働党、スペインのポデモス、アメリカではご存知の通りさきの大統領選挙の民主党予備選挙でサンダースさんがクリントンさんにあと一歩のところまで迫り、去年の中間選挙では、オカシオコルテスさんはじめサンダース派の下院議員が9人当選しました。フランスでは黄色のベスト運動が増税をストップさせました。
このスローガンが「反緊縮」です。これは、民衆の自分たちの暮らしにかかわることが、グローバルな大企業やウォール街やブリュッセルの一部のエリートの手に握られて、財政規律、インフレ警戒、国際競争力といったスローガンのもとに、左右にかかわりない必然として押し付けられてくることに反対して、経済を民衆のコントロールのもとに取り戻そうという運動です。

新自由主義のもたらした流れに反対し、福祉に医療に教育に、民衆の暮らしのために大胆に財政を投入する。そのために大企業や富裕層に応分の負担を課し、中央銀行の作ったおカネは銀行に無駄にためるのではなく、公的な資金として民衆のために使うということです。

昨年末、欧州でのこのような運動のリーダーの一人である、元ギリシャ財務大臣のバルファキスさんと、サンダースさんが、革新派の国際組織「プログレッシブ・インターナショナル」を作りました。日本でもこれに応える勢力を作るべきです。

日本でも、従来の、財政規律、インフレ警戒、国際競争力といったスローガンにとらわれていない人たち、大衆増税に反対し、民衆のために大胆に公金を使う「反緊縮」政策を進んで目指す人たちが、立憲民主党さんの中にも、共産党さんの中にも、その他の野党の中にも無所属の人の中にもたくさんいらっしゃると思います。
そのような人たちを可視化して、選択肢がないと悩んでいる多くの人々に、ここに選択肢があるよと明らかにしたいと思いました。

そこで、こちらから反緊縮の経済政策の簡単な基準を示し、それを受け入れてくれた候補者に認定マークを出すというアイデアを思いついたところ、思わぬ多くのかたがたから賛同を得て、とても精力的なスタッフの人たちと、私を含め22人の呼びかけ人の人たちが集まり、さる1月17日に、ホームページを公開してキャンペーンの発足を公表するに至ったものです。
発足後半月になりますが、現在、人の賛同人が、いくつもの熱いメッセージとともにお名前をお寄せくださっています。
これまでご協力くださったすべてのみなさんに厚くお礼申し上げます。

薔薇は、欧米では長く労働者の尊厳の象徴として、労働運動や社会主義運動でマークとして使われてきました。
また、薔薇マークは「おカネをばら撒く」のかけ言葉ともなっています。
さらにroseは、Rebuild Our Society and Economy 我々の社会と経済を再建しようというスローガンの頭文字にもなっています。
何より、灰色の緊縮より、バラ色の未来を語りたいです。

立候補予定者の自薦、他薦を受け付けています。ぜひ多くの候補者に、私たちの願う経済政策を採用していただき、目玉政策として掲げていただき、薔薇マークをつけて選挙戦を闘っていただきたいと思っています。多くの市民のみなさんに、そのためのご支援をお願いします。

呼びかけ人のあいさつ

朴勝俊(関西学院大学経済学部教授)

こんにちは、朴勝俊と申します。おそらく、ここに並んでる方々の中で、私が一番知名度が低いんじゃないかと思います。ひょっとすると、原発問題に関わってこられた方なら、ご存じのかたもおられたと思います。私は環境経済学者で、原発のリスクやコストの問題なんかを、早くから論じてきた者のひとりです。
なんで私のような人間が、経済問題に関わってるのか。それは原発問題と現れ方がよく似ているからです。かつては政府とか御用学者が、エネルギーがなくなるから原発が必要だ、原発は安全だとか言って、それを新聞がどこも同じように書いて、ほとんどの政治家が賛成していました。財政の問題もよく似ていまして、政府とか御用学者が金融緩和はよくないとか効かないとか、日本の財政は危機的状態だ、だから消費税をすぐに上げないといけない、上げても大丈夫だとか言って、それを新聞がどこも同じように書いて、ほとんどの政治家がそうだよなあと思っているわけです。
なぜそれではまずいのか。それは、人の命や健康が脅かされるからです。原発は言うまでもありませんが、政府が経済政策で間違いを犯した時にも、被害者が出ます。自殺とか過労死とか、おカネがなくてお医者にかかれないとか、いろんな形で人の命が奪われるんです。その意味で、経済と、保健・医療は似たところがあります。
不景気とかデフレとかは、直せる病気です。副作用が少ない治療法もあります。日本ではあまり、知られていない治療法です。その治療法の名前は、そう、「反緊縮の財政・金融政策」です。
経済と医療は、似ていると申しました。でも、経済の分野と、保健・医療の分野では、ひとつ大きな違いがあります。何でしょう。お医者さんは、医師免許がない人はやってはいけません。だから病気になった人も、まずお医者さんにかかるときはそんなに迷う必要はありません。
でも経済学者やエコノミストは国家試験も免許もないのです。だから、ひとびとはヤブの経済学者を見抜くのが難しいのです。デフレとか増税の問題ひとつをとっても、時には経済の基礎知識のない人たちが新聞とかテレビでペラペラ意見をしゃべってきました。「膿を出し切れ」とか「悪い部分はすぐ切れ」とかいう「切れ切れ医者」、あるいは「成長には期待できない」とかいう「手遅れ医者」みたいな人たちの本が売れたりしました。ヤブ医者みたいな人が、政治家の経済ブレーンをやってたりもしました。日本の病が長引いた原因は、そこにあります。
需要の不足で経済問題が起こっているときには緊縮はダメだ、反緊縮だというのは、世界の常識です。でも、日本の常識は違います。そしてそれが、日本の人びとの命や健康を脅かしています。私たちはこの状況を変えたいのです。セカンドオピニオンを語って行きたい。反緊縮が正しい治療法だということを広めていきたい。そして、反緊縮の経済政策を打ち出す政治家や候補者を応援してゆきたいと考えます。ご支援、ご賛同のほど、どうぞよろしくお願いします。

井上智洋(駒澤大学経済学部准教授)

駒澤大学経済学部教員の井上と申します。よろしくお願いします。私自身は完全に無党派で、どの党を支持するとか批判するとかいうことはあまりやっていないんですけど、それで政治動向にもあんまり詳しくはないという者なんですが、ただ、日本がはやくデフレ不況から脱却して欲しいというのは、10年も20年も前から思っていることで、それで反緊縮的な国会議員の方がもっと増えてほしいなというふうに思っています。
私は経済学者で、最近はAIについても論じたりしているんですが、本業はマクロ経済学で、中でも貨幣経済理論というのが専門です。そこで、理論的なことはおいても、歴史的に見て、世の中に出回るお金の量が、増えたり減ったりするだけで、長期的に景気が良くなったり悪くなったりするというのは起こっていることで、人口動態に影響を与えることすら起きています。それくらいお金っていうのは大事なものなんですが、それでお金の量を増やすというと、まぁ金融緩和を思い浮かべる人が多いと思うんですけど、もちろん金融緩和っていうのはとても重要な政策です。
なんですけど、今起きていることは、中央銀行がですね、日銀が民間銀行にお金を供給しているけれども、その民間銀行のところでお金が止まってしまっていて、銀行から企業にあんまりお金が流れていっていない。で、企業も内部留保を貯めているので、企業から家計、消費者にお金が回っていかず、消費需要があんまり増えていないという状況が起きています。企業が民間銀行からあんまりお金を借りない時代になっちゃっているわけですけど、企業がお金を借りないんだったら、帳尻を合わせるためにも政府が借りるしかないわけですね。つまり、政府が借金しないと景気は良くならないというのが私の持論です。つまり、「政府の借金なくしてデフレ脱却なし」ということですね。
ということはですね、消費増税をして借金を減らして、財政を再建しようなんて考えているうちはデフレからの完全脱却なんてできないというふうに思っています。だから財政再建というのはいま直接的に目指すべきことではなく、政府の目標として掲げる必要のないものだと思っています。
それで、増税どころか減税してもいいくらいだとは趣意書にも書いてあると思うんですが、5%に減らしてもいいでしょうということなんですが、さらにもっと言ってしまうとですね、お金をばら撒いてしまってもいいんじゃないかということです。薔薇マークというのがですね、「ばら撒く」にかけているんだということを後で知って、私自身が笑ってしまったんですけど。
減税するのか、あるいはお金をもっと積極的にばら撒くのか、あるいは社会保障とか教育とか必要なところに財政支出をしていくのかと、いろんな方法があるかと思うんですが、いずれにせよ反緊縮的な政策をとることが、日本が薔薇色の未来になるということにとって重要なことだと思っております。なので、今後も反緊縮政策というのを広めてまいりたいと思っております。以上です。

池田香代子さん(翻訳家・作家)

池田です。私は18年前になりますか、『世界がもし100人の村だったら』という絵本を出しました。一言で言うと、SDGs、「持続可能な開発目標」にまつわる寓話的な絵本です。SDGsという言葉、当時はまだなくて、その前身のMDGs(ミレニアム開発目標)やそれに関連したESDs(持続可能な開発のための教育)が提唱され始めていましたが、広がりはイマイチでした。いまはSDGsで通じるんですね。
その分野にはまったく素人でしたので、手探りでつくりました。素人ですから用意周到とはいかず、本を作ると初めて次の課題が見えてきます。そんな調子で、なんと数年前に6冊目を出しました。これは全然売れないのですが「経済編」です。そのとき世界経済をお勉強して、私がわかったのは、この20年でお金持ちは大金持ちになり、先進工業国の中間層がやせ細った、ということです。
とはいえ、アメリカやEU諸国は経済成長してるんですよね。外国に行くとみなさんお感じになるでしょうが、ちょっとしたランチを食べようと思ったら、1000円じゃ足りませんよね。2000円出さないと食べられないんです。でも日本では500円で、ワンコインでランチが食べられたりします。これがこの20年の間についた差なんです。世界的に見ると日本の経済は、相対的にも絶対的にも一人負けです。
いま、戦後最長の景気拡大と言われています。景気拡大と言うと、高度経済成長の時の感じを思い出しますけど、そんな好況感はぜんぜんありませんよね。誤差の範囲みたいな微々たる経済成長率ですし、それも統計があやしくて、もしかしたら間違っているのかもしれないというような。実感は、景気拡大という言葉から受ける印象とはかけはなれています。
私は素人なので間違っていたらごめんなさいなのですが、ピケティさんは、「金融緩和はいい、けれどお金の使い方が間違っている」と言ったと理解しました。クルーグマンさんも、「金融緩和だけでは、日本のこのデフレ状況は救えない」とおっしゃいました。つまり、お二方とも「金融緩和はいい、その他の政策が全部間違っている」というふうに言っていると思うんです。
私も直感的に生活者としてそう思います。GDPの6割は個人消費です。ところが、たとえば、教育、保育、介護、医療に関わる人々の低賃金や過重労働。問題です。ここでお給料を増やすべきではないでしょうか。保育士さんのお給料、プラス5万円なんて話が昔ありましたが、その方々はすぐにその5万円を使うじゃないですか。そうしたら、社会にお金がめぐると思うんです。それをしないで、まさにそこのところをどんどん削っている。なんだか、タコが自分の足を食べているような感じです。
私はベビーブーマーです。私の子供に当たる世代は第二次の小さなベビーブームが起きました。では、私の子供たちが結婚する年頃になって、もう少し小さくなるかもしれないけれど、第三次ベビーブームが起こるかなと思ったら、起きていないんですね。まったく山がない。ザーッと出生数が下がっている。一方的に下がっています。これ、人為的にやったんですよ、この国は。明らかに経済政策の失敗です。これをなんとか一刻も早く止めなければならないというときに、松尾さんたちが立ち上がってくださったので、私も素人ですけど、これはいいと思いました。選択肢を増やす、いいじゃないですか。本当に未来がバラ色になります。
そんなことをしたらインフレになるという人もいるけれど、ハイパーインフレとかってドイツの戦間期のこととかを考えても、戦争があったりするとハイパーインフレになるんですよね。インフレは、政策でブレーキをかけることが、デフレを何とかするよりも簡単。今の日本など、これまでの経済政策のおかげでインフレに対する手立てが増えちゃった状況なので、ハイパーインフレで恫喝する人は、私はちょっと裏があるんじゃないかと思います。
市民のみなさん、この薔薇マークキャンペーンにご賛同になったら、どうか選挙区の候補者の方々に「これどうですか、賛成して認定を受けてください」というふうに直に接触していただきたいと思います。選挙が近づくと候補者の方々って、すごく門戸を広げてくださいますので、ぜひそういうことでこのキャンペーンを広げてください。よろしくお願いいたします。