2021年11月12日
薔薇マークキャンペーン事務局
積極財政の主張が与野党に広がる
10月31日に投票が行われた総選挙で、自民党は15議席減らしたものの単独で過半数を確保し、岸田政権が継続されることになりました。
私たち薔薇マークキャンペーンは、10月1日に発表した声明で、岸田氏が安倍・菅政権の財界優先路線の継承者にほかならないことを指摘しました。世界的に見れば、新自由主義路線はすでに時代遅れのものになっています。日本の財界・支配層は、こうした経済政策の世界的時代転換に、可能な限りの利益を確保しながら対応していこうとしています。国内には一部の産業のみを残した上で、東南アジアなどの新興国に進出して生産し、グローバル競争に参加していくのが基本路線です。どの程度の産業を国内に残すか、財政支出の増加をどの程度容認するかで、対立の可能性を含みつつも、支配層の全体の意思としては、大資本の利益のために庶民を犠牲にしていく路線が貫かれているといえます。
こうしたことを踏まえて、私たちは先の声明で、「今後も自公政権が続けば、庶民にとっての景気悪化と社会の荒廃は避けられない」として「政権交代」を呼びかけました。総選挙が自公政権の継続という結果に終わったことは非常に残念です。
とはいえ、この総選挙に際して、与野党ともに大規模な経済対策の必要を主張するなど、積極財政的な姿勢に寄せてきたことは注目されます。財務省の矢野康治事務次官が『文芸春秋』11号に寄稿して「ばらまき合戦」と異例の批判を行うほどの状況が生れました。これは、コロナ禍によって人びとの生活や生業(なりわい)が打撃を受けているという客観的な条件に押されたものであると同時に、人びとのための大胆な財政出動を求め続けてきた私たちの運動の成果でもあるといえるでしょう。
生活と生業の危機打開の展望をもっと鮮明に
とりわけ、立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組の4党が、市民連合の呼びかけに応えて消費税減税を含む共通政策に合意したことは画期的でした。中でも、最も鮮鋭に積極財政を主張したれいわ新選組が3議席を獲得したことは重要です。4党以外では、やはり積極財政主張が目立った国民民主党が8議席から11議席に伸びています。
しかしながら、立憲民主党が14議席減らして96議席、日本共産党が2議席減らして10議席など、野党全体としては厳しい結果となりました。自民党も大規模な経済対策を訴えるなど積極財政へ寄せてくる中で、緊縮批判が争点化しにくくなったことは否定できません。
野党が一本化して臨んだ選挙区での勝率は3割程度に止まりました。このことについて、共産党との連携で保守的な支持層が逃げたことが原因だとの指摘もありますが、これは的外れです。一本化しなかったところでは自民党が圧倒的に勝っており、一本化することで接戦に持ち込む効果があったのは明白です。ただ一本化しただけでは足りず、生活と生業の危機を打開する展望が、もっと鮮明に伝わるようにすることが必要なのではないでしょうか。
今回の総選挙では、日本維新の会が11議席から41議席へ大きく議席を増やしました。維新が自民党批判の受け皿として伸びるという予想はありましたが、反緊縮的な色彩をそれほど強めないまま、むしろ「改革」を掲げて岸田政権への対決姿勢を示すことで躍進したことに注意が必要です。緊縮のイメージは薄めつつ、従来の「無駄削減」志向の層も確保できるバランスを探ろうとしているものとも思われます。大阪府以外の地域でも維新への支持が伸びている傾向があり、注視が必要です。
みんなのための大胆な財政出動を勝ち取ろう
今後の日本経済は、輸出拡大とバブルによるK字回復が見込まれます。一部の大企業は業績を回復するでしょう。しかし、不況下でコロナ対策予算を30兆円使い残すような新自由主義路線のせいで、内需は焼け野原です。このままでは、多くの人びとの生活や生業は苦しいままという状況が続くでしょう。人びとが景気の回復を実感できないうちに、コロナ対策で拡大した政府債務削減のためとして、財政緊縮・大衆増税が話題に上ることになるでしょう。これを許さない闘いが求められています。人びとのための大胆な財政出動を勝ち取るため、みんなで力を合わせて頑張りましょう。