菅義偉首相の辞意表明にあたって(事務局コメント)

2021年9月8日
薔薇マークキャンペーン事務局

 菅義偉首相が今月末投票の自民党総裁選挙に立候補せず、辞任に追い込まれました。
私たちは、昨年9月、菅新政権発足にあたって発表したコメントで、菅新政権の経済政策は安倍政権以上に新自由主義的な性格を強め、とりわけコロナをチャンスとして中小企業の淘汰を推進していくだろうと警告しました。残念ながら、事態は私たちの警告したとおりに推移してきました。
しかし、この人々の命や暮らし、生業をないがしろにする菅政権の姿勢は、多くの人々の不信や怒りを招きました。菅首相が、総選挙を目前にして辞意表明せざるをえなくなったのは当然の結果です。
以下、菅政権が進めてきた政策を総括し、来る総選挙で、人々の力で転換させることを呼びかけます。

数々の新自由主義の法案を成立させる

菅さんのブレーンには、新自由主義改革を進めてきた竹中平蔵さんや中小企業半減論を唱えるデービッド・アトキンソンさんがいます。この二人は、菅さんの首相就任後早速、公式に登用されました。この二人を筆頭とする菅さんカラーのチームが狡智を絞った成果が、6月16日に終わった第204回国会で成立しています。
「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案」では、規模拡大やグローバル展開する中小企業だけを選抜支援する仕組みがつくられ、「所得税法等の一部を改正する法律案」ではM&A(買収・合併)を促進する税制優遇が導入されました。また、「銀行法等改正案」では、銀行が株で中小企業を支配できるようにするとともに、地域金融機関の合併や統合を後押しする仕組みがつくられました。

支援金を出し渋り補正予算を30兆も使い残す

こうした中小企業淘汰路線の裏には、国内産業を空洞化させて海外に企業進出し、生活に必要なものはそこから輸入するよう転換しようという財界の大方針があります。
そうした背景からコロナを中小企業淘汰のチャンスにしようと狙う菅政権は、事業者への補償が必要となる緊急事態宣言を出し渋り、五輪の開催強行とも相まって、感染状況の悪化をもたらしました。
コロナ禍が長引くことになったにもかかわらず、菅政権は、事業者支援を縮小してきました。納税猶予の特例制度も家賃支援給付金も、今年初めの感染拡大第4波の前に打ち切られました。持続化給付金も「一時支援金」「月次支援金」という小間切れの制度に姿を変え、業者の実態をみない機械的な審査で「不備ループ」といわれる事態すら引き起こしました。
こうした支援金出し渋り政策もあって、菅政権は前年度のコロナ対策の補正予算を、なんと30兆円も使い残しています。安倍前政権が「空前絶後」と自賛したこの補正予算は、たくさんの水増しがあると指摘されたものでしたが、それでもいわゆる「真水」に限った50数兆円は、GDP比にして諸外国に比べ特に見劣りのするものではありませんでした。しかし30兆円も使い残したことで、世界的に見ても少ない、竜頭蛇尾な結果に終わったことになります。

新自由主義・緊縮財政の路線を不退転の決意で推し進めてきた菅政権

そもそも新型コロナ感染では、長年の新自由主義政策で保健衛生、医療への支出が緊縮されてきたために、検査は不十分で、医療崩壊を招いています。にもかかわらず菅政権は、コロナ禍の下でも病床削減措置を続けてきました。
菅政権の悪政といえば、五輪強行によるコロナ蔓延のほか、学術会議会員任命拒否や、国民投票法、重要土地利用規制法強行などがよく指摘されます。それだけでなく、新自由主義に基づく中小企業淘汰と産業空洞化と、可能なかぎりの緊縮財政の路線を、不退転の決意で推し進めてきたことも、強く指摘しておかなければなりません。

世界の潮流は「高圧経済政策」へ

世界を見渡せば、菅政権が推し進めたような新自由主義路線は、すでに時代遅れのものになっています。
コロナ経済対策としての追加的な財政支出・減税の規模は、GDP比にして4分の1あまりのアメリカを筆頭に、ニュージーランドの19.3%ほか主要英連邦諸国の10%台半ばの数字が続きます。緊縮の総本山だったドイツでも11.0%です。特にアメリカのバイデン政権は、発足後早速約208兆円の「米国救済計画」を通し、先日も約110兆円のインフラ投資計画を可決させました。財政赤字は「米国救済計画」で日本の国家予算分に匹敵する約100兆円膨らんだ上、さらにこれで28兆円膨らむ見込みです。
こうした路線は、「高圧経済政策」と称されています。大規模な財政政策と、一時的にインフレ目標値を上回ることを辞さない金融緩和の組み合わせによって、経済の過熱をしばらく容認し、雇用の本格改善をめざす政策のことです。このような考え方は、少し前までは、MMTのような異端派か左派的なケインジアンの主張でしたが、今では主流の経済学者が続々賛同を表明しています。

総選挙で時代遅れの新自由主義路線にピリオドを

いま、自民党の総裁選挙がマスコミで取り上げられていますが、菅政権の新自由主義の法案や緊縮財政は、いうまでもなく、自民党の議員たちがこぞって賛成して成立させきたものです。誰が自民党総裁に選ばれようと、企業の海外進出を進めて国内産業を淘汰する路線が、大枠において変化するとは考えられません。
私たちは、総選挙で、時代遅れの新自由主義路線にピリオドを打たなければなりません。そのために、これに対抗する野党が、こうした世界の潮流を民衆のために活かす政策を大胆に打ち出すことを期待します。