消費税率10%への引き上げ強行にあたっての
薔薇マークキャンペーンの声明
2019/10/01
薔薇マークキャンペーン
今日、世論の多数が反対する中で、とうとう消費税率が10%に引き上げられました。私たちは安倍内閣のこの暴挙に、満腔の怒りを込めて抗議します。それとともに、今年2月の立ち上げ以来、この増税への反対を訴えてきたにもかかわらず、これをとめることができなかった私たちの力の至らなさを、心から遺憾に思います。
昨年来、あらゆる経済指標が悪化を続けています。いっこうに賃金が伸びない中、8月の輸出も商業販売額も9ヶ月連続で前年比マイナスでした。鉱工業生産指数、景気動向指数、日銀短観業況判断DI、法人企業景気予測調査みんな崩れています。「街角景気」、消費者態度指数はどんどんと下落しています。そしてついに、安倍首相が成果を強調してきた雇用も崩れ始めました。求人数はこの半年前年比で減り続けています。
前回2014年の消費税率引き上げは、あらゆる指標が登り調子のときでした。にもかかわらず消費税増税によって景気拡大は頓挫することになりました。今度は明らかに景気が崩れ始めている中での税率引き上げです。この夏は、前回起こった「駆け込み需要」すら見られませんでした。
経済指標の悪化の背景には、米中関税戦争による世界経済の悪化が要因としてありますが、安倍政権は常に米国側の立場にたって、このような対立の解消に努めようとはしません。加えて韓国との関係性を悪化させ、意図的に通商を破壊した上、観光産業にもダメージを与えるなど、景気悪化の種を広げています。さらに安倍政権は、超高齢化で本来ますます必要となる社会保障について、財政規律を守るためとして、新たな会議を立ち上げ、「痛みを伴う改革」に本格的に踏み切ろうとしています。年金制度の受給年齢の引き上げ、医療費や介護保険の利用者負担増等々が報道されていますが、これは直接に人々の暮らしを悪化させるだけではありません。民間金融機関への露骨な利益誘導を目的とした、金融庁の「年金2000万円不足報告」事件とともに、人々の将来不安を高めてむやみに貯蓄をあおり、消費の減退を一層推し進めて景気後退に拍車をかけるでしょう。
政府は「ポイント還元制度」の打撃緩和策や東京オリンピック特需によって、景気の悪化を防ぐつもりのようです。しかし来夏両者はほぼ同時に終わります。そのあと土砂降りのデフレ不況が再来する可能性は目下濃厚です。その結果もたらされるクビ切り、就職難、倒産、廃業、学業断念や家庭崩壊等々、かけがえのない多くの個々人の人生の暗転に、誰が責任をとるのでしょうか。
よく言われる通り、もともと消費税は逆進性があり、貧しい人ほど負担が大きくなります。所得のうちどうしても消費せざるを得ない割合が高い貧困者は、消費税が上がると貯蓄できる額が減ります。他方で所得のうち消費する割合が低い富裕層の人は、消費税が上がっても貯蓄に響かず、かえって消費を減らして貯蓄を増やします。だから消費税の増税で資産格差が拡大します。そればかりか、これまでの消費税の増税は、結局、富裕層の所得減税や、法人税率の引き下げの穴埋めに使われてきました。ますます格差を助長してきたわけです。
このような大金持ちや大企業への減税とセットで消費税増税が進められてきた結果、日本の税収に占める消費税の比率は高まっており、すでに北欧のいくつかの国の値を超えています。所得税は累進課税で、法人税は原則利潤が出なければ課税されませんので、自動的に、景気がよくなれば増税され、悪くなれば減税されて、景気を安定化させます。消費税にはその機能が弱いので、これからの日本経済は、一旦景気が悪くなると回復できない体質がますますひどくなると予想されます。
財政危機が煽られることによって、いつも犠牲になるのは、公的サービスを削減され、消費税を上げられて暮らしが苦しくなる民衆です。実際には消費税を上げるたびに景気回復は頓挫し、かえって財政赤字は増えました。大企業は国内市場を見捨てて海外に出ていって大もうけし、賃金は下がって、消費税をかけても競争力のある激安輸入品ばかりが売れて、国内に残った企業は圧迫されていきました。今回また消費税が上がったことで、この傾向に拍車がかかることが懸念されます。法人税のせいで企業が出て行くのではなくて、消費税を上げるせいで出て行くのではないでしょうか。国の借金のせいで国が破綻するのではなく、消費税を上げるせいで国の生産力がなくなって破綻するのではないでしょうか。
私たちはバブル崩壊以来、今我慢すればじき楽になると言われて我慢した末、ようやく明かりが見えてきたと思ったところで叩き落される経験を何度もしてきました。またですか。もうたくさんです。ひとびとは明るい未来を望んでいます。消費税をとりあえず5%に戻すことで、ひとびとの暮らしを楽にして消費需要を興し、目下の景気後退を防ぎ、崖っぷちにあった中小事業者や農林水産業者やその他の多くの雇用を救うべきです。そして、これまでの長年にわたる失策を逆回転させて、雇用の正規化を進め、地方に回す予算を大幅に増加させ、闘う労働組合を育て、外国人を安上がりな労働力と見るのではなく同じ仲間として賃上げして競合をなくして、豊かな地べたの内需にしっかりと支えられた経済を作り出すために、多くの勢力が力を合わせることを訴えます。